浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「キッチン常夜燈」

No.3515
【今日の1冊】
心が暖かくなる小説
「キッチン常夜燈」

また、知らない作家の本を読んだ。長月天音「キッチン常夜燈」だ。タイトルからして心が暖かくなりそうな気がする。読了時間は3時間だった。

街の路地裏で夜から朝にかけてオープンするキッチン常夜灯。チェーン系レストランの女性店長みもざにとって、昼間の戦闘モードをオフにし、素の自分に戻れる大切な場所だ。店の常連になってから不眠症も怖くない。農夫風ポタージュ、赤ワインと楽しむシャルキトリー、ご褒美の仔羊料理、アップルパイなど心から食べたい物だけ味わう至福の時間。寡黙なシェフが作る一皿は、疲れた心をほぐして明日への元気をくれる。共感と美味しさに溢れる心が暖かくなる物語。

いい小説だった。隠れ家ではないけれど、働く人にとっては美味しい料理に癒やされて寛げるお店の存在は重要だと思わせる作品だった。食事は生きるためにするだけじゃなく、やはり楽しんで寛いで、また明日から頑張ろうという気持になるものだ。「キッチン常夜燈」は夜から朝まて開くビストロの話だが、シェフの作る料理がどれも美味しそうなのがいい。心から暖かくなれる小説でした。
★★★★☆