No.4320
【今日の読書】
「鬼平先生流 粋な酒飯術」
池波正太郎の書生を10年務めた佐藤隆介の酒と肴と飯に関する随筆集「鬼平先生流 粋な酒飯術」を読む。
池波正太郎の書生を10年務めた著者による食と旅をめぐる痛快エッセイ。
〔生来口福〕を生き方の基本に置き、老書生は「飲み食い」に命をかける。移ろいゆく日々のなかで描かれる生活は、まさに粋で生唾もの。
「飲み食いに真剣でないということは、そもそも生き方が真剣でないということだ」ほか、その折々に希代の食道楽であった亡師の言葉・思い出が甦る。食をめぐる思索を哲学にまで高めた、これぞ本物の文章、本物の味わい。
かなりの老齢の著者の書いた随筆集だけに、紹介される肴の美味しさが十分に伝わる。しかし池波正太郎の話が中心かと思えば、池波のエピソードは所々だ。それなら、あえて鬼平先生流というタイトルではなく、佐藤隆介の食の歳時記とした方が良かった。少し高飛車な書き方は著者の味だから仕方ないのだろうけれど。