浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「むかしの味」

No.3799
【今日の1冊】
懐かしい味が登場
「むかしの味」

美味しそうな随筆を読みたいと思い、久しぶりに池波正太郎の「むかしの味」を読む。10年ぶりの再読だ。

「〈たいめいけん〉の洋食には、古き良き時代の東京の豊かな生活が温存されている。物質の豊かさではない。その頃の東京に住んでいた人々の、心の豊かさのことである」人生の折々に出会った懐かしい味を今も残している店を改めて全国に訪ね、初めて食べた時の強烈な思い出を語る。そして、変貌著しい現代に昔の味を伝え続けている店の人たちの細かな心遣いを称える。

鬼平犯科帳」「仕掛人藤枝梅安」の作者・池波正太郎の食の随筆はどれも秀逸だ。大御所作家だからといって和食や割烹料理だけではなく、カツレツやホットケーキ、クリームソーダの魅力も語る。おれがよく通っていた京都のイノダコーヒ三条店にも池波正太郎が通っていたのは嬉しかった。
★★★★☆