浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

鬼平梅安 江戸暮らし

No.3759
【今日の1冊】
江戸時代の食生活など
鬼平梅安 江戸暮らし」

寒くなると、炬燵に入ってや、雰囲気のいい蕎麦屋で日本酒のぬる燗を飲みながら池波正太郎を読む。池波正太郎の「鬼平犯科帳」や「仕掛人藤枝梅安」は、美味しい江戸時代の食事風景が描かれていていい。池波正太郎鬼平梅安 江戸暮らし」はそんなたまらない随筆だ。

自分の屋敷で、庭に咲いた桜を眺めながら静かに酒を酌む、それが長谷川平蔵のような武家の花見ですよ。ワーッと上野や飛鳥山へ繰り出して大騒ぎするのは、もっぱら下町の長屋の連中だよ。「鬼平の花見」より。握り鮨の起源、昔の船宿、大石内蔵助の好物の牛肉、お女郎に教わった朝飯、鯉料理など。時代小説の人気キャラクター達が生きる江戸の風物や食文化が鮮やかに蘇る。食通作家の粋なエッセイ集。

30代より、1年の暦に沿った生活をしてきた。正月は雑煮を作り、初詣。1月は十日戎に行き、2月は梅を観て、春には桜を愛でる。夏には風鈴を飾り、朝顔を育てる。冬至には柚子湯に入り、大晦日には蕎麦を茹でる。「鬼平梅安 江戸暮らし」を読むと、人間は必ずしも金が全てではないことがよくわかる。仕事の後に1杯の酒を飲むこと、寒い夜に熱い蕎麦を食べること、それら小さなことが、生きる幸せに繋がればいい。
★★★★☆