浮月堂黄昏抄

風流候・原田浮月堂の花鳥風月な日々

「恋愛中毒」

No.3092
【今日の1冊】
恋愛という麻薬に溺れて
「恋愛中毒」

30代の頃、中学時代のGFが市立図書館の司書だったので、頼まれて図書館主催の読書会の講師を1年務めたことがある。
読書会は月1回だったのだが、その第1回目のテーマ本が山本文緒の「恋愛中毒」(1998)だった。
ずっと渡辺淳一の男目線の不倫小説を読んでいたのだが、女目線の不倫小説を読んでみよう、と「恋愛中毒」を27年ぶりに再読してみた。

翻訳家と弁当屋のアルバイトを掛け持ちする、水無月美雨は三十路過ぎ。数年前に離婚をして今はひとり暮らしだ。
ある日、アルバイト先の弁当屋に小説家の創路功二郎が訪れる。昔から創路の大ファンだった水無月。強引で我儘で女好き。そんな創路と関係を持つのに時間はかからなかった。
地味で従順な女性に見えた水無月だったが、創路への想いが強くなるほどに、その狂気に満ちた愛は暴走していく。

久しぶりに「恋愛中毒」を再読し、昔よりもかなり衝撃的だった。創路の愛人になってから水無月が変化していった、と思っていたが、彼女は最初から壊れていたんだ。小説の後半から暴走が激化する水無月だが、それはまるで恋愛という麻薬に溺れていく、言わば恋愛中毒に蝕まれていく様子が描かれている。
しかし水無月の恋愛中毒はスティーヴン・キングの「ミザリー」とは違う。暴走する根底に、創路への愛を独占したい、という想い。それは自分から去って行った元夫との辛い過去を思い出したくないという気持ちなんだろう。
ラストは賛否両論あるだろうが、おれは良い結末だと思うんだが。
「恋愛中毒」は2000年にドラマ化されている。水無月薬師丸ひろ子、創路功二郎を鹿賀丈史が演じた。おれもドラマは全話観たが良く出来ていた。
木更津キャッツアイ」でも薬師丸ひろ子は壊れる女教師を演じていたが、なかなか素晴らしかった。

https://youtu.be/mUJM3GLU_ZU