浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「汚れた手をそこで拭かない」

No.3492
【今日の1冊】
直木賞候補作としては◎
「汚れた手をそこで拭かない」

久しぶりに芦沢央の作品を読む。2020年の第164回下半期の直木賞候補作「汚れた手をそこで拭かない」だ。読了時間は3時間だ。

ひたひたと忍び寄る恐怖。ぬるりと変容する日常。
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家。きっかけはほんの些細な秘密だった。保身や油断、猜疑心や傲慢。内部から毒に蝕まれ、気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。

この作品はミステリーではないのではないか。芦沢央作品だから、どんでん返しのイヤミスかと思ったのだが、人々が日常で起こるささいな出来事が、悪い方に追い込まれていく。どちらかと言えばミステリーよりもトワイライトゾーンミステリーゾーン)に近い気がする。芦沢央のミステリーとしては物足りない感はあるが、直木賞候補作品としては上出来だと思うのだが。
★★★★☆