浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「人間狩り」

No.3246
【今日の1冊】
ネット上の制裁は是か非か
「人間狩り」

このところ国内ミステリーが続いている。芦沢央に続いては横溝正史ミステリー大賞優秀賞受賞作品の犬塚理人「人間狩り」を読んでみた。テーマは少年法とネット閲覧者による制裁について、というところか。

14歳の少年Aによる20年前の女児殺害事件。その残酷な犯行映像が闇サイトにより売買された。警視庁監察係の白石は警察関係者からの流出を疑い、捜査を始める。一方、カード会社で借金の督促を仕事とする江梨子は、悪人をネットに曝して懲らしめる〈自警団〉サイトの活動にのめり込んでいた。江梨子とサイトの仲間は、新たな標的として元少年Aを追い詰めていく。映像の流出元を探る警察と、私刑を下すべく事件の少年Aを追うネット自警団。二つの正義が重なった時、現れる哀しき真実とは何か。

最近、社会問題にもなっている飲食店でのバカッターの暴走や、殺人罪すら少年法で守られる未成年たち。そんな犯罪者の顔や家族、在籍校や職場まで曝す、ネット住人と呼ばれる第三者。法律で裁けない未成年犯罪者をネット上で制裁するのは果たして正義か。
「人間狩り」は読みやすい内容だが、やはりイヤミス(読んだ後、嫌な気持ちになるミステリー)には違いない。それは少年法の矛盾とネット上の制裁の是非に答えが出ない以上、仕方のない問題だ。おれ的には小学生であっても、傷害致死や殺人は成人同様に裁かれるべきだと思っているし、情状酌量の余地のない殺人は1人殺しただけでも死刑にするべきだと思っているんだが。
★★★★☆