浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「逢うには、遠すぎる」

No.3318
【今日の1冊】
疑問なハードボイルド
「逢うには、遠すぎる」

最近は馳星周北方謙三作品を交互に読んでいる。暗黒小説と正統派ハードボイルド。正直、頭が少し疲れる。そう思いながらも、20代に読んだ、北方謙三「逢うには、遠すぎる」を再読する。Kindle290冊目。

7年前に別れた妻・杏子がロス―東京を結ぶコカイン密売組織のトラブルに巻きこまれた。雨の夜、カメラマン・上杉にかかってきた無言の電話。救いを求めてきたのだろうか、気にかかる。まだ愛しているかも知れない杏子の行方を追って上杉は単身ロスへ飛ぶ。

20代の頃、本作品を読んでなかなかと思い、少し感動した。当時の好きな女性にも本を貸した記憶もある。40年ぶりに読んだ感想は正直「?」だった。何のために別れた妻・杏子を上杉が追うのかが分からない。まだ愛しているのか、の割りにその想いが読者には伝わらないし、そのために今の恋人の力を借りるのもどうなんだか。北方謙三は初期の名作4作品を書き、息抜きに「逢うには、遠すぎる」を書いたように思えてくる。昔に読んでそれなりに感動したのは、おれも若かったからか。
★★☆☆☆