浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「眠りなき夜」

No.3297
【今日の1冊】
北方謙三初期の名作
「眠りなき夜」

北方謙三初期の名作は、やはりデビュー作「弔鐘はるかなり」、第1回日本冒険小説協会大賞受賞「眠りなき夜」、第2回日本冒険小説協会大賞受賞「檻」、映画化された「逃れの街」ではあるまいか。久しぶりに「眠りなき夜」を再読した。

弁護士・谷の同僚で共同経営者の戸部が失踪、続いて彼と関わりのあった小山民子が殺された。メモを手がかりに、谷は山形県S市に飛んだ。早速、三人組に襲われる。黒幕と見られる大物政治家・室井などの名が浮かぶ。そして戸部の惨殺体発見。民子との間に何があったのか? 室井との関連は? 友の死を追って、谷は深い闇を解明すべく、熱い怒りを雪の街に爆発させる。第1回日本冒険小説協会大賞受賞作、第4回吉川英治文学新人賞受賞作。

主人公の谷は弁護士なのでそれほど強くはない。しかし「やられたまま引きさがる男だとは思われたくない」として、元刑事で友人の探偵・杉田と真相解明に乗り出す。それこそがまさに北方ハードボイルドの真骨頂だ。「眠りなき夜」の2年後を描いた続編「夜が傷つけた」はイマイチの出来だが、本作品は実に素晴らしい。
★★★★★