浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「銀行籠城」

No.3335
【今日の1冊】
新藤冬樹らしい残酷小説
「銀行籠城」

この本も読んだような、別の作家の作品だったような気もするが、とりあえず読んでみた。新藤冬樹「銀行籠城」は2004年の作品だが、これは昭和54年に起きた大阪市住吉区三菱銀行人質事件をモチーフにしていることは間違いない。

うだるような猛暑の7月15午後3時、あさがお銀行中野支店で惨劇は起こった。閉店寸前の行内に押し入った男が、男性客と案内係を次々に射殺。人質に取った行員と客を全裸にし籠城した。何ら具体的な要求をせず、阿鼻叫喚の行内で残虐な行為を繰り返す男。その真の目的とは何なのか?
現代社会の歪みを描ききったクライムノベルの最高傑作。

「銀行籠城」のアマゾンの読者レビューはあまりに低い。確かに新藤冬樹の名作ブラック小説「黒い太陽」三部作や「無間地獄」に比べればやや薄っぺらい感はある。しかし実際に起きた三菱銀行人質事件を考えれば、籠城状態の銀行の中がどんな地獄だったのかを想起させるには十分な小説であった。三菱銀行事件の犯人・梅川昭美は単なる残酷なだけの男だったが、本作品の犯人は警察より優れた知能の持ち主な所が小説を面白くしていた。本作品は3時間で読了した。
★★★☆☆

三菱銀行人質事件】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E9%8A%80%E8%A1%8C%E4%BA%BA%E8%B3%AA%E4%BA%8B%E4%BB%B6