浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「冷酷  座間9人殺害事件」

No.3278
【今日の1冊】
わかりやすく不可解な事件
「冷酷  座間9人殺害事件」

永くノンフィクションを読んでなかったので、スポーツではなく、犯罪についてのものを読んだ。小野一光「冷酷  座間9人殺害事件」だ。

2017年10月、神奈川県座間市のアパートの一室から大量の切断遺体が見つかった。部屋の住人・白石隆浩が女性8人男性1人を殺害・解体したと判明するや、その残虐さに世間は震撼した。白石はどんな人物か?なぜ事件は起きたのか。330分に及んだ獄中対話と裁判の模様を完全収録。史上まれな凶悪殺人犯に肉迫した、戦慄のノンフィクション。

読み終えて感じたのは、わかりやすく不可解な事件だということだ。犯人・白石は一貫して嘘をついておらず、淡々と殺害状況と遺体解体を裁判で説明してゆくし、死刑も望んでいる。不可解なのは全く自責の念もなく、被害者への性欲と金品強奪をごく普通に語る白石の思考だ。それと本人が望んでいないのに、弁護側が控訴していることだ。結果、弁護側に不信感を抱いた白石は、弁護側の質問を無視して、本来敵側の検察側の質問にのみ答えているのだ。死刑になるために無関係の人を大量に殺傷する若い犯罪者も多いが、これが令和の犯罪だとしたら、やはり異常でしかない。
★★★★☆