浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「恋」


No.3162
【今日の1冊】
これは凄い小説だ!
「恋」

小池真理子の「恋」を読んだ。なんという素晴らしい小説か。1995年下半期の直木賞選考会で、選考員全員が一致して本作を直木賞に選んだ理由がよくわかった。

1972年冬。全国を震撼させた浅間山荘事件の蔭で一人の女が引き起こした殺人事件。当時学生だった矢野布美子は、翻訳の下書きのアルバイトに自分を雇った大学助教授・片瀬信太郎と妻の雛子との奔放な結びつきに惹かれ、倒錯した関係に陥っていく。しかし一人の青年の出現によって生じた軋みが三人の微妙な均衡に悲劇をもたらす。
全編を覆う官能と虚無感。その奥底に漂う静謐な熱情を綴り、小池文学の頂点を極めた直木賞受賞作。

おれは経験したことがないから複数の同時恋愛はわからない。ただ、理解はできる。奔放な夫婦に惹かれて、その世界にのめり込む女子大生にとって、それは単に興味や好奇心からではなく、<恋>なのだ。
しかし久々に完璧な偏愛恋愛小説を読んだ。これほどまでに見事な構成力のある作品は見事という他ない。
★★★★★


https://youtu.be/XNmorUMbNvY