浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「友情」

No.3043
【今日の1冊】
純文学は難解ではない
「友情」

読書好きの友人は多々いるのだが、ベストセラー本やマニュアル本、スピリチュアルな本ばかりで、純文学などは蚊帳の外である。
純文学=難しい、という解釈は間違いだ。純文学の内容は一般的な恋愛小説や偏愛小説と変わりない。それは色々と読んでみればわかる筈だ。
おれが初めて純文学を読んだのは小学校4年の時で、武者小路実篤の「友情」だった。

脚本家の野島は、杉子に熱烈な恋をする。一番の親友で新進作家の大宮の助力を得て、思いを遂げるべく振舞うが、杉子は大宮に惹かれており、その想いを伝え、大宮はついに杉子との結婚を決意する。片想いと失恋。野島は苦しみに耐えて再起し、仕事の上で大宮と闘うことを誓うのだ。
これはラブソングの歌詞になり得るような内容ではないか。確かに純文学には難しいものもあるが、その大半は我々の人生における恋愛、偏愛的なものだと言える。

谷崎潤一郎の「鍵」は、読まれることを前提にして書かれた日記をお互い盗み読みする夫婦の愛欲の物語だし、「春琴抄」は、盲目の三味線奏者・春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていく物語だ。顔に大火傷を負った春琴の顔を見ないように佐助は自らの眼を潰す。
これはもうマゾヒズムの世界ではありませぬか。

【文學ト云フ事  友情】
https://youtu.be/hAWOHB0zGQ0

田山花袋  蒲団】
https://youtu.be/smBEosVcOuU

夏目漱石  三四郎
https://youtu.be/svTt5l11QUg