No.4278
【今日の読書】
「珈琲屋の人々⑥ 遠まわりの純情」
久しぶりに「珈琲屋の人々」の最新刊が出たので読む。この作品は本の前にNHK-BSでドラマ化を観て面白かった。主人公の行介を高橋克典、冬子を木村多江、島木を八嶋智人が演じた。いいドラマだった。
商店街にあるちいさな喫茶店は、悩みを抱えた人間たちの大きな心のよりどころだった。あることで人を殺してしまった『珈琲屋』の主人・行介と、行介のかつての恋人・冬子、幼馴染みの島木を軸に描かれる人間模様。今作では、5歳の今日子が店に預けられることから始まる。様々な人間が交差して織りなすドラマのひとつひとつが心に沁みる連作短編集。
今までの「珈琲屋の人々」は本当に面白かった。6作目の本作品にはいくつかの疑問が残った。今までもそうではあったが、各章の人々が、過去に殺人を犯した行介の顔を見に来て、行介と冬子と島木に相談するパターンがしつこすぎる。そこまで行介の殺人にこだわらなくてもと思う。それと冬子と島木が常に店にいるのも不自然だ。
また、各章の人々があまりに情けなく、ちょっと現実的ではない。特に「中年エレジー」の主人公の情けなさはない。また「遠まわりの純情」の中途半端な終わり方もないと思う。行介、冬子、島木以外の登場人物の現実離れした無責任はいかがなものか。前巻あたりで終わった方が良かった。