浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「珈琲屋の人々」

No.3044
【今日の1冊】
耐える愛とは何か
「珈琲屋の人々」

何年か前にNHK-BSでドラマを観てから、ようやく原作を読んだ。池永陽の「珈琲屋の人々」だ。面白くて、2日で続刊も5冊読んだ。

東京は下町の商店街にある喫茶店『珈琲屋』。主人の宗田行介はかつて、ある理由から人を殺していた。そして刑務所に服役し商店街に帰ってきた。行介の幼馴染みの冬子と島木だけは行介を普通に迎えた。冬子は行介と恋人同士だったが、両親の勧めで田舎の旧家に嫁ぐ。しかし行介が忘れられず、彼の出所が近づいた時にわざと浮気して離婚、彼女も商店街の実家の蕎麦屋に戻ってきた。まだ互いに想い合っているのに行介は「自分は幸せになる資格はない」と冬子と結婚しない。そんな行介を責めながら見守る島木。行介と冬子と島木のいる珈琲屋に悩みを抱えた商店街の人たちが今日もやって来る。

本作は珈琲屋主人の行介の元にやって来る、心に傷を負った人々のエピソードの短編集だ。それらはハッピーエンドとバッドエンドを匂わすだけであえて結末は書かれていない。
ちなみにドラマでは、行介を高橋克典、冬子を木村多江、島木を八島智人が演じた。お勧めです。