浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

隣の女

No.3097
【今日の映画】
偶然からの悲劇的恋愛
「隣の女」

フランス映画で一番好きな監督はフランソワ・トリュフォーだ。20代の頃は大阪中の名画座を回って、トリュフォー作品を観た。
ヌーヴェルヴァーグの監督の中でもゴダールに比べてトリュフォー作品は理解しやすい。
そんなトリュフォーの晩年の作品でもある「隣の女」(1981)はおれの最も好きな作品だ。

ベルナールは妻と息子と郊外の一軒家で幸せに暮らしていた。ある日、隣にフィリップという中年男性とその妻が引っ越してくる。引っ越し当日、フィリップから妻のマチルドを紹介され、ベルナールは言葉を失う。マチルドはベルナールがかつて愛した恋人だった。
ベルナールはその事実を妻に話せず、ただマチルドを避けていた。マチルドは、2人で話がしたいとベルナールに電話をかけるが、ベルナールは拒絶する。
ベルナールとマチルドは近所のスーパーで偶然会う。ベルナールは自分がマチルドに捨てられたのだと思い込んでいたが、マチルドはベルナールを愛しすぎて正気を失い、消えたのだ、と説明する。ベルナールにとってもマチルドは本気で愛した女性で、2人は熱いキスを交わす。
マチルドはあるホテルにベルナールを呼び出す。2人は過去に苦しいほど愛し合い、結婚まで考えた仲だった。偶然の再会により2人の愛は再び燃え上がっていく。

2人の自宅近くでテニス場を経営する、ジューヴ夫人の視点で映画は進む。彼女もまた、若い頃に不倫を経験し自殺未遂をした過去を持つ。
隣家に引っ越して来なくても、かつての恋人と再会して燃え上がる話は多々ある。40代以降のクラス会あたりがそうだろう。W不倫=家庭不和の男女という考え方は古い。何の不満もなく幸せな家庭の夫も妻も不倫する。それに大半が、お互いの家庭を捨てるつもりはないんだ。
映画「隣の女」は悲劇的な結末で終わる。
ラストにジューヴ夫人がベルナールとマチルドについて語る。
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名作です。