浮月堂黄昏抄

風流候・原田浮月堂の花鳥風月な日々

「ランプコントロール」

No.3987
【今日の1冊】
「ランプコントロール

30代で「パイロットフィッシュ」「アジアンタムブルー」を読んだ。今回久しぶりに大崎善生を読む。「ランプコントロール」だ。

大手出版社に勤める高林直人は、27歳のときドイツ出向を命じられる。それは学生時代からの恋人、山本理沙との別れを意味していた。フランクフルトで同僚と男3人の共同生活を始め、現地の女性ステファニーと恋に落ちる直人。ところが日本に帰国して後、3年以上も音信不通だった理沙の消息を知ることになる。

パイロットフィッシュ」「アジアンタムブルー」同様にとても切ない小説だった。日本とドイツでの主人公の恋愛は幸せだが、その終焉を予期する気持はよくわかる。ただ、主人公の優柔不断とまでは言わないが、決断力の弱さが女性を苦しめ、自分も苦しむことになる。非情なようだが、人生はどこかで割り切らないと前には薦めない部分があるんだろう。