浮月堂黄昏抄

風流候・原田浮月堂の花鳥風月な日々

「乱都」

No.3972
【今日の1冊】
「乱都」

歴女と呼ばれる、歴史好きな女性たちがいるが、話してみると、戦国時代と幕末(新撰組中心)しか知らない。日本の王朝の順番も知らず、鎌倉時代の後に江戸時代なんていい加減な知識しかない。本当に歴史を把握するなら、鎌倉幕府の政治システムと、室町幕府の複雑な流れを知らないと、本当の歴女ではない。
室町期の京都を描いた、天野純希「乱都」を読む。

応仁の乱に始まる《仁義なき戦い》。応仁の乱から室町幕府の終焉まで、裏切りと戦乱の坩堝と化した京に魅入られ、争いに明け暮れた男たちの生き様を描く連作集。

日本の内乱の中で一番複雑で把握しにくいのが、室町中期の応仁の乱だ。京都を焼き尽くし11年も続いた。歴史研究家でも完全把握が難しい応仁の乱の後半から、豊臣秀吉の天下統一を本書は描いている。畠山義就細川政元大内義興細川高国足利義輝足利義昭、そして京都の商人を主人公にした連作集だが、これがなかなか面白い。ある意味で呪われた都の京都の歴史がよくわかる。あえて言えば、応仁の乱の始まりから終わりまでの話ならもっと良かったかも知れない。