浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「ボッコちゃん」

No.3315
【今日の1冊】
優れた大人の童話
「ボッコちゃん」

初めて文庫本を読んだのは小学校2年の時で、星新一ショートショート「ボッコちゃん」だった。ショートショートというのは短編よりも掌編よりも短い小説で、星新一は生涯に1000の作品を残している。

あるバーのマスターが、美しい女性型アンドロイドを作り、店員としてお店に立たせた。その名はボッコちゃん。見た目は美しい人間の女性だが知能は低く、客から言われた言葉をそのまま返すしかできない。しかし男性客たちはボッコちゃんの美しさの虜になり、お店は大繁盛。そんな中、ある青年がボッコちゃんに本気の恋をして、お店に悲劇が。

51年ぶりに「ボッコちゃん」を読んでみた。ミドルいやシニアの世代になって感じたのは「大人の童話」ではないか、ということだった。読んでいてほんのり楽しく、教訓にもなる。ショートショート「ボッコちゃん」を読んでいて優しい気持ちになるのは、ブラックな小説やイヤミスばかり読んだり、日々ネットで厭なニュースばかり飛び込み、心に余裕がなくなっているからだろう。星新一の「ボッコちゃん」は大切にしたい1冊である。
★★★★★