浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「夜行虫」

No.2991
【今日の1冊】
破滅していく男の哀歌
「夜行虫」

久しぶりに馳星周ノワール小説(暗黒小説)をご紹介したい。馳星周のデビュー3作目の「夜行虫」だ。

主人公の加倉は日本から台湾に渡ったプロ野球投手だが、黒社会の仕切る八百長に手を染める。だが彼を慕う青年・俊郎が、その純朴な正義感ゆえに加倉を守ろうと八百長の件を警察に通報しようとしたことで破滅への転落がはじまる。
加倉は衝動的に俊郎を殺殺害する。八百長が暴かれることへの恐怖と、美しい俊郎の妻・麗芬を自分のものにしたいという邪念からだった。そして加倉は台湾の黒社会と警察、日本から来たマスコミに追い詰められていくが・・・

日本と違い八百長が日常茶飯事の台湾の野球界と、黒社会のえげつなさの描写が凄い、日本やアジアを舞台にしたノワール小説はやはり馳星周の独壇場だ。