浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「虚の王」

No.2915
【今日の1冊】
人が狂気に走る傑作小説
馳星周  虚の王」

久しぶりに馳星周不夜城、鎮魂歌、長恨歌の3部作を再読してみた。やはりノワール小説(暗黒小説)といえば馳星周だよなあ。そう思いながら「虚の王」を読む。Kindle100冊目だ。

暴力団のチンピラ新田隆弘は、かつては渋谷で伝説の不良チーム“金狼”の元メンバーだが今ではヤクザの下っ端であることに鬱屈をため込んでいた。兄貴分の命令で高校生が作った売春組織を探っていた隆弘は、中心人物の渡辺栄司という青年に辿り着く。彼はさして喧嘩が強そうでもなく、進学校に通う色白の優男だ。だが栄司は仲間を圧倒的な恐怖で支配していた。隆弘が自分とは異質の栄司の狂気に触れたときに破滅に向かって行く。

暴力第一の隆弘が心とは裏腹に栄司に魅せられ、人を殺し、所属する暴力団に歯向かい破滅していく過程がたまらなくスリリングだ。さすが馳星周だと評価したくなる小説だった。