浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「死の刻」

No.3328
【今日の1冊】
警察の無力さが露呈
「死の刻」  

学園粛清ものを続けて読んでいるのだが、あまりいい気分ではない。それでも読んでしまうのは、やはり青少年の犯罪が激増し、その加害者を守る少年法に対する憤りからだろう。麻野涼「死の刻」は、高校生を粛清する話ではない。高校の教育者への復讐の話だ。

ある日、有名私立進学校湘南台旭日高校に、学校を爆破するという脅迫電話が入った。犯人はメールで、「明日3月25日2時20分までに、湘南台旭日高校を破壊しようとしている我々の動機を解明しろ」と指示してきた。校舎には、400人もの生徒がいる。湘南台警察署は必死の捜査を開始する。犯人の動機は?爆破の時刻が迫る。

途中で犯人視点も入り、犯人の要求が、かつて高校で行った中国への修学旅行で起きた鉄道事故の真実について、ということがわかる。そこで起きた教育者の卑怯な行動を露呈させようと犯人は学校爆破を計画する。犯人への感情移入もできるのだが、主人公の警部があまりに頭が悪い。ラストで事件は解決するのだが、結局、警察の無力さだけが印象に残る小説だった。
★★★☆☆