浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「BAR追分」

No.3903(再)
【今日の1冊】
人が人を想う酒場
「BAR追分」

このところ心に優しい本が続くが、今回もハートウォーミングな1冊だ。伊吹有喜の「BAR追分」だ。

新宿三丁目の交差点近くにかつて新宿追分と呼ばれた街の「ねこみち横丁」の奥に、その店はある。そこは道が左右に分かれる、まさに追分だ。BAR追分。昼は<バール追分>でコーヒーやカレーなどの定食を、夜は<バー追分>で本格的なカクテル、ハンバーグサンドなど魅力的な酒の肴を供している。昼は笑顔が可愛らしい女店主が、夜は白髪のバーテンダーがもてなす。そこは人生の分岐点で人々が立ち止まる場所だった。

実際にBARに行けばわかるが、ウヰスキーやカクテルを1人で飲む男性や女性を見ると、この人には抱えているものがあるんだな、とか、自分自身への祝杯だろうか、などとと考えてしまう。BAR追分に集まる人たちも何かを抱えながら、それでも人に優しくありたい、と思っている。チヤホヤされたければスナックかラウンジに行けばいい。BARは男も女も自分に帰れる場所なんです。
★★★★★