浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「天生の狐」

No.3453
【今日の1冊】
ドラマ化して欲しい作品
「天生の狐」

「沖の権左」が凄く良かったので、志坂圭の「天生の狐(あもうのきつね)」をゆっくり時間をかけて読んでみた。読了時間は5時間だ。

舞台は江戸時代の天生(現在の岐阜県飛騨市)。 主人公は、医者の助手として山で薬草を採って暮らす17歳の少女・紺。 紺は元武家の娘だが、幼い頃に両親が殺され、医者の宋哲に育てられた。 宋哲の裏の顔は幕府に仕える地方の忍〈草〉であり、紺もまた忍びの技を仕込まれて育つ。 ある日、街へ降りた紺は、どこか見覚えのある顔をしたひとりの武士を見かける、その武士こそが凄腕の剣士であり、両親の仇である男〈津田〉であった。 それを知ったことにより、「仇討など馬鹿らしい」と思い生きてきた紺に初めて熱い気持ちが湧き起こる。〈忍〉として育てられた紺は果たして両親の敵を討てるのか?

「沖の権左」もそうだったが、志坂圭の作品は主人公が熱いし、時代考証がしっかりしている。紺の弟・善九郎は大原騒動(百姓一揆)の首謀者の1人で実在の人物だし、代官の大原もそうだ。このあたりがライトノベルな時代小説とは違うのだろう。ラストは決してハッピーエンドではないけれど、小さな光明を見出だすものとしては良かったんじゃないか。
★★★★★