浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「死の名はワルキューレ」

No.3402
【今日の1冊】
熱い志に泣ける
「死の名はワルキューレ

「翳りの城」があまりに良かったので、三吉眞一郎の「死の名はワルキューレ」を読んでみた。読了時間は4時間だった。

「一緒に飛んでもらえないだろうか、未来のドイツのために」第二次大戦末期、ドイツ空軍中将ガーランドは激化する米英軍の無差別攻撃に対抗するため、極秘に製造を進めていた戦闘機「ワルキューレ」に乗り込む精鋭部隊を結成する。敵の300機に対してワルキューレは僅かに5機。圧倒的に不利な状況に置かれながらも、愛する人を守るため、愛する祖国を守るため、軍人たちは誇りを胸に立ち上がった。

アメリカ軍〈第100爆撃大隊〉の無差別攻撃は、ドイツ軍だけでなく、女性や子供など一般市民を大量に虐殺する。それをナチスを嫌悪するガーランド中将とワルキューレの搭乗員たちは、死んだ一般市民の復讐と、ドイツの未来を担う若者たちのために立ち上がるのだが、その姿に胸が熱くなる。ちょっと福井晴敏の「終末のローレライ」を思わせる。よくある戦記物のナチス対米英軍ではなく、ナチスではないドイツ対米英軍という設定がいい。戦闘機の空中戦の描き方も素晴らしかった。デビュー作「翳りの城」同様に、未来あるアメリカの若者の乗る爆撃機を破壊しながら、それが正義か悩む登場人物の姿は共感できる。ガーランド中将やカムフーバー少将、タンク博士が実在の人物であることも、小説のリアルさがあって良かった。お勧めです。
★★★★