浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「終戦のローレライ」

No.2982
【今日の1冊】
58年間で一番良かった本
終戦のローレライ

今まで読んできた本で良かったのは山田風太郎甲賀忍法帖」「魔界転生」、馳星周不夜城」、矢作俊彦「ブロードウェイの自転車」、村松友視時代屋の女房」、新藤冬樹「黒い太陽」だが、58年の読書人生でのNo.1は福井晴敏の名作「終戦のローレライ」だ。
あまりに素晴らしい作品なので、おれが下手な解説をするより講談社による全4巻の解説文を掲載したい。

昭和20年、日本が滅亡に瀕していた夏。崩壊したナチスドイツからもたらされた戦利潜水艦・伊507が、男たちの、国家の運命をねじ曲げてゆく。五島列島沖に沈む特殊兵器・ローレライとはなにか。

この国に「あるべき終戦の形」をもたらすと言われる特殊兵器・ローレライを求めて出航した伊507。回収任務に抜擢された少年兵・折笠征人は、太平洋の魔女と恐れられたローレライの実像を知る。米軍潜水艦との息詰まる死闘のさなか、深海に響き渡る魔女の歌声がもたらすのは生か死か。
 
その日、広島は核の業火に包まれた。人類史上類を見ない大量殺戮の閃光が、日本に定められた敗北の道を歩ませ、「国家としての切腹」を目論む浅倉大佐の計画を加速させる。彼が望む「あるべき終戦の形」とは何か。その凄惨な真実が語られる時、伊507乗員たちは言葉を失い、そして決断を迫られた。

ローレライは、あなたが望む終戦のためには歌わない」あらゆる絶望と悲憤を乗り越え、伊507は最後の戦闘へ赴く。第3の原子爆弾投下を阻止せよ。孤立無援の状況下、乗員たちはその一戦にすべてを賭けた。そこに守るべき未来があると信じて。
今、くり返す混迷の時代に捧げる「終戦」の祈り。畢生の大作、完結。

名作「終戦のローレライ」は2005年に役所広司主演で映画化された。こちらも良く出来た傑作だった。