浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「こだま酒場紀行」

No.3202
【今日の1冊】
地方にこそ美味あり
「こだま酒場紀行」

サラリーマン時代、出張に行く時にたまに若い営業部員と一緒だった。「出張先の夕食は何を食べるの?」と聞くと、「吉野家です」と言われて驚いた。海鮮豊かな街に来ても吉野家の牛丼とは恐れ入る。おれは地方に出張したら必ず名物を食べるし、時間を調整して地元の温泉に行った。聞けば出張先でも勝手な行動はできない、と言っていた。馬鹿か君は。出張先まで会社の監視があるわけないだろうに。
サラリーマンではないが、酒場ライター大竹聡の「新幹線各駅停車 こだま酒場紀行」は実にいい本だ。

東京から博多まで35の駅に各駅停車する新幹線こだま号。その各駅で下車をして酒場を探す。その土地ごとの名物を出す居酒屋や、常連客に愛されてきたバーがあるはず。そんな軽い気持ちで東京駅から始まった東海道・山陽新幹線グリーン車搭載の月刊誌「ひととき」の人気連載の待望の書籍化。

おれの経験では、出張先でも会社の目を気にして仕事だけして帰る社員は出世しないし、それほどの能力はない。地方の営業所勤務の友人は朝の朝礼の後、近くの喫茶店でコーヒーを飲みながらスポーツ新聞を読み、仕事開始は昼から。そんな不良社員だが、その県での営業成績は5年連続1位だ。真面目なだけが優秀な社員ではないのだ。
★★★☆☆