浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「田園交響楽」

No.3144
【今日の1冊】
恋は盲目か
田園交響楽

自宅近くに深夜2時まで営業している居酒屋がある。
おれはたまに23時頃に行ってカウンターで酒を飲んでいた。深夜の居酒屋で酒を飲む時は読書がいい。それも純文学が似合っている。おれは泉鏡花谷崎潤一郎を読んでいた。たまにはフランスの純文学も。
アンドレ・ジッドの「田園交響楽」もそんな時に読んだんだ。

プロテスタントキリスト教の宗派のひとつ)の牧師が、亡くなった老婆の元に呼ばれると、その老婆の姪がいた。身よりもなく、全くの無知で動物的だったその少女ジェルトリュードは、牧師に拾われ、その教育の下で次第に美しく知性的になっていく。しかし牧師の妻はジェルトリュードと家族が一緒に暮らすのを嫌がる。やがて牧師の長男はジェルトリュードと愛し合う。それに猛烈に反対する牧師。彼もまたジェルトリュードを愛していたのだ。牧師は友人の医師からジェルトリュードの開眼手術を勧められる。しかし待ち望んでいた開眼手術の後、彼女は川に身を投げて死んでしまう。目が見えるようになったジェルトリュードは、慕い愛していた牧師ではなく、自分が本当に愛していたのは牧師の長男であることに気付く、恋が叶わないとわかったジェルトリュードは自殺したのである。
 
カトリックの神父は終生結婚は出来ないが、プロテスタントの牧師は結婚して家庭を持てる。
神に仕える者としての、厳しさの差なのだろうが、神職の牧師が許されぬ想いが引き起こした悲劇なのだ。
聖書に「盲人が盲人を導く」という言葉があるが、盲人が同じ盲人を導くことによって、ついには両者とも穴へ墜落してしまうという意味だ、
結局、盲人のジェルトリュードを教え愛した牧師もまた、恋に盲目だったと言うわけだ。
★★☆☆☆