浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「無影燈」

No.3114
【今日の1冊】
渡辺淳一最高傑作 
「無影燈」

初期の医学小説、後期の偏愛恋愛小説の全てを通して、渡辺淳一の最高傑作は「無影燈」だ。これは間違いない。

優秀な外科医でありながら大学でのエリートの道を捨てた、どこか影のある直江庸介。看護師の倫子はそんな彼に惹かれ、深く愛するようになる。しかし直江は酒に溺れ、女性関係が絶えない。
孤独で深い影を引きずり、酒と女に耽溺する直江は恋人の倫子にとって、捉えきれない男だった。彼の秘密に気付き始めた倫子は、正月休みに直江に旅に誘われて、雪景色の北海道へ旅立つのだが。

おれが初めて「無影燈」を読んだのは19歳だった。その衝撃的な内容には少なからずショックを受けた。
1970年代に田宮二郎主演で<白いシリーズ>という6作のドラマがあり、「無影燈」を原作にした「白い影」は1973年に放送された第1作である。田宮二郎の影のあるキャラクターもあり、ドラマも素晴らしかった。
ちなみに<白いシリーズ>の最終作が「白い巨塔」であり、その後に宇津井健山口百恵の<赤いシリーズ>に続くのだ。
無影燈とは、外科手術などに用いる影のできない照明器具のことだ。