浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「暗手(あんしゅ)」

No. 3002
【今日の1冊】
野球の次はサッカーに
「暗手(あんしゅ)」

先週ご紹介した馳星周ノワール小説「夜行虫」の20年後の続編「暗手」を取り上げたい。

台湾のプロ野球八百長に手を染め、罪から逃れるために次々と殺しを重ねた加倉昭彦。居場所を失い、顔も名前も変えて過去を抹消し、逃れ着いたのはサッカーの地イタリアだった。イタリアの黒社会では、殺し以外の仕事なら何でも請け負い、いつしか<暗手>、暗闇から伸びてくる手と呼ばれるようになっていた。そんなある日、サッカー賭博の帝王・王天から、イタリアの弱小チームのロッコに所属する日本人ゴールキーパー・大森怜央に八百長をさせろとの依頼が舞い込む。計画実行に向けて着実に準備を進めていく加倉だったが、大森の姉の写真を目にしてから過去の記憶が甦り、計画の歯車が狂い始める。

大森怜央の姉は前作「夜行虫」で弟分を殺害して手に入れた麗芬と瓜二つという設定がいい。それと主人公の加倉が元野球選手なのに台湾での修羅場をくぐり抜け、殺しの腕も一流になっているところが20年の歳月を感じさせる。「夜行虫」共々名作だ。