浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

金子達仁 ラスト・ワン

No.2769
【今日の1冊】
壮絶な地獄を見た少女
金子達仁「ラスト・ワン」

スポーツライター金子達仁の「ラスト・ワン」を再読してみた。前に読んだのは書籍が発売した時で今回はKindleで読んだ。主人公は右脚を失った障害者の中西麻耶がロンドンパラリンピックに出場するまでの話。

ソフトテニスの選手だった高校生の中西麻耶が事故で右脚を失い、興味のなかった障害者レースの走り幅跳びに転向する。初めての障害者大会で日本新記録を出し、その世界のぬるさを感じ甘く見てしまうのだが現実はそんなものではなかった。精神的に追い詰められ、海外大会に出場する資金繰りに苦闘し、自身のセミヌードカレンダーを売ってまで調達する。そんな障害者アスリートの異端児を非難し攻撃するのは祖国であるはずの日本だった。精神が崩壊寸前の中西麻耶を救ったのは誰だったのか。

壮烈な地獄から復帰した中西麻耶は今も現役で、東京パラリンピックにも出場した。 ただ、中西麻耶はひとつだけ秘密にしていたことがあり、それが本書のラスト1行で明らかにされる。その衝撃の告白によって中西麻耶への見方が180度変わる。本書は金子達仁の素晴らしいスポーツドキュメンタリーだ。