浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「沖の権左」

No.3443
【今日の1冊】
熱い青春小説
「沖の権左」

久しぶりに時代小説を読んだ。志坂圭「沖の権左」だ。帯のコピーに惹かれて読んだのだが凄い小説だった。読了時間は4時間だった。

巨鯨を取らねば斬首!
かつて多くの漁師の命を奪い、手出しが禁じられた伝説の巨鯨〈権左〉に無謀にも挑む男がいた。勝山に生まれた少年・吾一は、父・重吉のように鯨組の頭領を目指していた。だが不漁に悩んだ重吉は村の掟に反し、巨大鯨〈権左〉に挑むも仲間に多大な犠牲を出し、自らも命を落とす。父の不手際により村を追われた吾一は江戸で鯨とは無縁の日々を過ごすも、いつまでも権左を忘れることができない。しかしある日、偶然にも吾一は権左を捕る秘策を思いつく。だがそれは、幕府にご法度とされている手段だった。

全体的に熱い小説だった。村を追われ、江戸で石工の仕事をしていた吾一が、知り合った人たちとの縁で権左捕鯨の妙案を思いついてからの展開が凄い。話の7割が江戸での吾一の恋や、権左捕鯨のための資金調達なのだが、当時の江戸の文化が詳細に描かれている。そして終盤に、吾一が再び海に出る話なのだが、全てを通して、1人の青年の成長物語だった。いや、素晴らしい作品でしたなあ。
★★★★★