浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「なぎさホテル」

No.3349
【今日の1冊】
無頼派作家の原点
「なぎさホテル」

伊集院静直木賞受賞作で、おれが一番好きな短編集「受け月」を再読しようと思ったがKindleにない。仕方がないので、昔読んだ「なぎさホテル」を読む。

1978年冬、若き日の伊集院静が、あてもなく立ち寄った逗子の海岸に建つそのホテルで温かく迎え入れらえる。「いいんですよ。部屋代なんていつだって、ある時に支払ってくれれば」見ず知らずの自分を、家族のように受け入れてくれる〈逗子なぎさホテル〉の支配人や副支配人、従業員たち。伊集院静はそれからホテルで暮らした7年余りの日々の中で、小説を書きはじめ作家デビュー、大人の男への道を歩き出す。
作家・伊集院静の誕生まで、若き日に向き合った彷徨と苦悩、それを近くで見守ってくれた人々との出逢いと別れを描く。作家としての原点を綴った貴重な自伝的随想。

最後の無頼派作家・伊集院静の、逗子なぎさホテルで過ごした歳月を回想した作品だ。若いだけで金のない若者を優しく受け入れてくれた場所があったことに驚く。仕事がらみだが、おれもホテル暮らしを1ヶ月したことがある。逗子なぎさホテルみたいに、金がなくても、とはならないが、長期滞在すると、マネージャーや掃除の人とは仲良くなれるものだ。昔からホテルを自宅代わりに使用している資産家や有名人に憧れた。伊集院静の作家としての原点を知るにはなかなか良い本だった。
★★★☆☆