浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「森瑶子の帽子」

No.2785
【今日の1冊】
80年代を疾走する女流作家
島崎今日子・著
森瑶子の帽子」

島崎今日子の「安井かずみのいた時代」が素晴らしく良かったので、「森瑶子の帽子」を読んでみた。
森瑶子は70年代終わりから90年代初めに人気を誇ったベストセラー作家だ。

37歳の平凡な主婦・伊藤雅代が「情事」ですばる文学賞を受賞し、森瑶子としてデビューしてから52歳で逝去するまでを綴っている。
デビュー後、社交界の花形として贅沢な生活を送りながら生涯に約70冊のベストセラーを執筆する。だがその生活は英国人の夫との絶えない喧嘩、3人の娘に注げない愛情などの犠牲の上に成り立っていたという。「森瑶子の帽子」は、3人の娘、英国人の夫、父親、先輩作家、後輩作家、かつての婚約者、秘書、友人の視点から裸の森瑶子像を追っている。実に骨太なノンフィクションだ。

おれが初めて森瑶子の文章を読んだのは、雑誌SAVVYに連載されていた「男と女の糸電話」という、アートディレクターの亀海昌次との同一テーマによるエッセイだった。亀海昌次こそ、森瑶子のかつての婚約者であり、運命の男だった。このエッセイは「もう一度オクラホマミクサを踊ろう」のタイトルで本になっている。