浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

「老人と海」

No.3484
【今日の1冊】
闘うことの意味
老人と海

高校時代から、〈ロストジェネレーション(失われた世代)〉派の作家が好きなので、スコット・フィッツジェラルドやウイリアム・フォークナーなどを読んできた。中でもヘミングウェイが一番好きだった。

キューバの老漁師サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった1人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘の後、老人は勝ったが、帰途、鮫に襲われ、舟に括り付けた獲物はみるみる食いちぎられてゆく。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。

ヘミングウェイは「移動祝祭日」なども良いのだが、やはり「海流の中の島々」や「老人と海」のように、海の話がいい。4日にわたる死闘の末にカジキマグロを仕留めが、鮫に食われてほぼ骨状態のまま持ち帰る。長い死闘は無意味に思えるが、サンチャゴは結果ではなくカジキマグロと闘ったことに意味がある、と言う。これは漁だけでなく、野球やボクシングにもあてはまるだけに胸が熱くなるんだ。
★★★☆☆