浮月堂黄昏抄

風流なライフスタイルのために

西宮競輪場

No.2890
【レトロスペクティブ】
希少な組立式走路
「西宮競輪場」

勤務していたデザイン会社が社長の死去と共に解散となり、30にして失業した。仕方なく、自宅から1時間で通える会社を探して履歴書を送ったり面接に行っていた。99社目の武庫之荘にある香料会社の面接に行った帰り、スーツのままで西宮競輪場に寄ってみた。

西宮競輪場は、西宮球場が競輪の時だけ組立式のバンク(走路)を使用する希少な競輪場である。阪急ブレーブスこども会の頃は野球を観た西宮球場が競輪をしているのだ。失業中はパチンコと競馬と競輪で食べていたおれは観客席に座り、今日の面接のことを考えていた。すると、見るからに競輪で人生を失敗したような老人が隣に座り、サラリーマンか、あんたと聞いてきた。失業中で面接の帰りなんです、と答えると紙コップのビールをくれた。競輪の結果は散々だったが、帰る時にその老人は、まあそのうちいいこともあるわ、と声をかけてくれた。

西宮球場は競輪やアメフトにも使用されたが、今はもうない。99社目の香料会社はだめだったが、100社目に受けた会社は採用だった。老人の言ったように、そのうちいいこともあったんだ。

💮添付のきれいな写真は「サイタロウの自転車日記」様のサイトからお借り致しました。どうもありがとうございました。